ロシアのウクライナ侵攻から1か月

 エネルギー資源を算出するロシア。軍事侵攻を絶対認めるわけにはいかないがゆえにロシアにNOを突きつけなければならない西側諸国。さりとてウクライナに対する支援は、武器供与にとどめておかないと、軍隊を送り込むようなじたいになると第三次世界大戦の勃発を引き起こしかねないリスクを生じる。したがって経済制裁を続けるしかないのである。そこが子のウクライナ侵攻が長引きそうな雰囲気を醸し出す。ロシアにすれば、いなプーチンにすれば、何ら成果を得ることもなく、この幕を引くことになれば自らの政治生命を縮めるだけである。ここは何としてもウクライナ軍事侵攻の果実を手に入れたい。やみくもに活路を見出すための手段として、化学兵器核兵器が俎上に上がってきても不思議ではない。核兵器がもつ抑止力、人間が有する英知、そういったものが極限まで試されることになるのであろうか。

 

 なんとか西側諸国はこれ以上戦火が広がらないように、さまざまな努力を重ねてはいるが、経済的な制裁にとどまっているがゆえに、局面を変えるには至っていない。米国のバイデン大統領にすれば(西側諸国の首脳ならだれもが該当するかもしれない)、ウクライナ問題を自らの手で解決できれば、政治生命を引き延ばすチャンスなのだが、残念ながら有効な解決策を提示できていない。我が国の岸田首相においても、G7首脳と足並みをそろえることでしか現在の国際舞台に立てていないようである。

 

 人類の進歩は、第二次世界大戦後欧米におけるEUの誕生で、二度と戦火を交えないという方向に足並みをそろえ、それぞれの国々の利害を調整して統合の道を歩み始めたように思えたが、21世紀に入って以来欧米各国ではナショナリズムが息を吹き返し、経済的豊かさが享受できなくなると不満が拡がり出した。そして、不協和音のほうが大きくなってきた。懐が寂しくなると、浅ましさが顔を出し、せっかく心の余裕を見出し始めたところで、時間を巻き戻してしまったようである。