中流層を増やす政策を!!

1ドル=145.62円、8月16日20時における為替レートである。1ドル=74円という時代があったことを考えると隔世の感がある。日本経済は、コロナ禍からの復活によるインバウンドの増加で活況を呈している感はあるが、現実はどうであろうか?

 

 日米の金利差は拡大するばかりである。米国のインフレがなかなか収拾されないこともあり、日本経済は消費者物価の上昇期が続くものの、金利上昇に踏み切れない状況から脱出できないでいる。帝国バンクの調査によると、日本の主要な食品・飲料企業195社で今年値上げをしたり予定している品目は累計3万品目を超える。これは昨年の2万5768品目を大きく上回り、平均の値上げ率も今年は昨年比で1%増15%に達する。この物価高騰に賃金上昇が追い付いていないため、国内消費がなかなか増えてこないのである。株価は好景気を意識させる上昇カーブを描いてはいるが、日本経済の実態はそうはなっていないのである。

 

 しかも、これまで日本経済を引っ張ってきた自動車産業は世界各国の電気自動車への傾斜に対して追いついていない。これまでと同様の売り上げを期待できなくなっている。また自動運転技術に関しても、世界の最先端からは遅れ始めている。したがって、自動車産業はもはや日本経済をけん引する力がなくなっている。かつて栄華を誇った、代物家電や携帯電話、半導体部門で次々と敗退を余儀なくされた苦い経験が思い出される。日本は、今や世界を牽引する技術をほとんど有しなくなっているといってもよいほどあまりにも少なくなっている。しかも、30年以上実質賃金が上昇しなかったために、日本中の多くの家計には節約意識がしみついており、消費に向かえない現状がある。

 

 物価上昇に少しでも追いつこうと、日本企業は内部留保を崩しながら賃上げに動いている。けれども、商品値上げによる内需増は、原料費の値上げや買い控えにより思うようには増えていない。外需もまた為替安で増加しそうにないし、しかも競争力を失くしつつある。このように考えると、日本経済に明るい未来は見えてこない。残念ながら先行きを考えると期待はできないのである。